ユウウコララマハイル

「いただきます」


ナツミは神社で願い事をするように丁寧に手をあわせてから口に運んだ。


「やっぱり松本先輩の教え方は凄いわぁ」


天使屋の調理担当はナツミの高校の先輩にあたる。


「俺の腕ではなくて?」
「そういうことにしといて欲しいなら、しとくけど」


そのあと「ちゃんと美味しいから」と素直な感想も伝えておく。


「このカルボナーラ、卵の味が濃厚だね」
「ローマ風は生クリーム使わないんだ。麺も店のをわけてもらったからそこら辺のスーパーで買うものより小麦の香りが高いし、ソースも絡みやすい」


ほかにも古沢は薀蓄を披露した。
私の特技は人の話を聞かないことだと思いながら適度に相槌を打って、華麗に話題をやり過ごす。
熱弁を振るう古沢をよそに、ナツミの皿の上のパスタは綺麗に胃に納まっていく。


「趣味が仕事なんて、なんて羨ましい」


好きなこと、好きなものになると人は饒舌になる。
日頃重度の人見知りで、無愛想で、根暗なヤツであっても例外ではないらしい。


「中村だってそうだろ」
「確かに読書は趣味だけど、古沢とは意味合いが違うよ。趣味を仕事にしてはならないっていう、先人の言葉が近頃わかってきたし」