ユウウコララマハイル

カケルの勤める『アスズシキダ』はカフェ飯を日替わりで提供している。
ほか、軽食も充実していて、主にそれらを作っているのはマスターの実妹の松本で、カケルは主に雑用と接客を担当している。
ほかにバリスタのライセンスを持っているらしいマスターと、厨房を手伝っているマスターの奥さん、そしてパティシエールの真智がいる。


昨年マスターの奥さんが第三子を妊娠した。
そのことがきっかけで、カケルは厨房にも入るようになった。
自分がお客さまに出せる料理を作るにはまだ時間が必要だけれど、中村になら問題なく出せる。


お湯がぐらぐらと煮えている。
カルボナーラにあうのは平面タイプ、ラティーニ・スパゲッティ。


まさか自分が料理をすることになるとは露にも思わなかった。
自分は一生この外見で悩み続けるのだと思っていたし、会社に隷属されながら働き続けるのだとも思っていた。


人生、どう転ぶかわからない。


窒息死しそうだったカケルの環境を救ってくれたのは中村だ。
中村が「私と一緒に暮らさない?」と誘ってくれたから今の自分がある。


「さっきは怒鳴ってわるかった」


麺と一緒に言葉も投入し、お湯の中に沈んでいく。
自分も中村と同じで、謝罪の言葉を本人に言えない。