ユウウコララマハイル

カケルは気を取り直して、テーブルの上に横たわったくまを見下ろす。
そのくまのぬいぐるみは昨日帰るときにマスターから預かったもので、本当の持ち主は彼の下の愛娘だ。


しかしまぁ、そうなるわな。


このぬいぐるみで一番ほぐしやすい背中の綿口を裂いて、中を見た。
中に詰められている綿が本来の柔らかさを失い偏っている。
マスターが洗濯機で洗った上に干し方もわるかったせいだ。
幼稚園児の娘は押しつぶされたように細くなったぬいぐるみを渡され号泣したのだそうだ。


ぬいぐるみの洗濯はプロに任せたほうがいい。
カケルも簡単な汚れや小さなものなら洗濯するけれど、プロではない。
プロとは洗濯のプロ、クリーニング屋さんのことだ。
ぬいぐるみの修繕も本来ならその専門職に任せたほうがいいに決まっているけれど、この程度なら直せる。
ただ自己流で、ときどき失敗する。
それでもよければ引き受けることにしている。


ぺしゃんこになった綿を取り出す。
身体が皮一枚になったぬいぐるみはなんとも哀れだ。


頭部は素人にはほぼ修繕不可能。目・鼻・口・耳などの細かいパーツを支え、繋いでいる糸が繊細だからだ。
お腹の綿を替えるだけでも背筋がシャンとするから見栄えも随分変わる。
少なくとも今よりはマシだろう。


「ん? なんだろ、これ」


取り出した綿の中から出てきたのは人差し指ほどの長さの紙だ。


『ハキラルノカ』


紙には緑の字でそう書かれている。