「あっ、葛西さんー!もー、勝手に皆に言わないでくださいよ!一応上司だから先に伝えたのに!」
そんな葛西さんを追いかけ可愛く怒るのは、噂の主である黒木ちゃん。
予想以上に話を大きく広められ恥ずかしいのだろう、ボブヘアを揺らすその頬は赤く染まっている。
「黒木ちゃん、本当!?結婚するの!?」
「あ、凛花さん……その、はい、」
「相手は!?ちゃんと働いてる!?家事手伝ってくれるタイプ!?偉そうだったりダメな男だったりしない!?」
「三好さん、完全に立場が娘の結婚相手を気にかけるお母さん……」
望は呆れたようにそう呟くけれど、私にとって黒木ちゃんは部署内でも一番頼りにできる妹のような存在。
そんな黒木ちゃんの結婚相手を気にかけないわけがない。
「あはは、大丈夫ですよ。ちゃんと優しくて、誠実な人です」
「そっかぁ……ならよかった、びっくりしちゃったけど幸せになってね!おめでとう!」
「凛花さん……」
一番に葛西さんに言ったのも、きっと私には言いづらい気持ちがあったからなのだろう。
よしよしと頭を撫でた私に、黒木ちゃんは目を少し潤ませて私にぎゅーっと抱きついた。
「けど凛花さん、また後輩に先越されちゃいましたねぇ」
「いーの!おめでたいことに年功序列なんて関係ないんだから!」
「強がらなくていいんですよー?『凛花さんのために合コンひらいてくれ』って他の子に頼んでおいてあげますから」
「余計なお世話!」
失礼な葛西さんに、ふんっと顔をそむければ、横で笑っていた武田さんは「あれ」と首をかしげる。
「三好さんって、どれくらい彼氏いないの?」
「もう3年くらいですかねぇ、あの頃はまだ少しは女性らしい繊細さがあって社内でも評判だったんですよー」
「って、なんで葛西さんが答えるの!」
勝手にベラベラ話して!
キッと睨みつけると、葛西さんは武田さんのがっちりとした体の後ろに小さな自分の姿を隠す。



