シルビア




「……ふふ、確かに、変だったかも」

「でしょ?あー、笑いすぎでお腹痛い」

「そこまで笑う?相変わらず笑いのツボが浅いのね」



変なの。ついこの前まで思い出すと悲しくて、口を聞くのにもぎこちなかったのに。今、望とふたりで笑っている。



結局いつだって望のペースに流されて、こうして笑顔になれてしまう。

あの頃と変わらない、ふたりがいる。



「あれ、珍しい光景だねぇ。ふたりが和やかムードだなんて」



口を開けた缶を手にふたり笑っていると、そこに偶然やってきた武田さんは、物珍しそうな顔で私たちを見た。

その声にここが社内であることを思い出し、私は咄嗟に望と距離をとった。



「そうなんですよ〜、三好さんもようやく俺に心を開いてくれて」

「馴れ馴れしく触ろうとしないでくれる?」

「あれ、そうでもなかったね」



わざとおどけてみせるように肩を抱こうとする望に、私が冷たくよければたちまち空気はいつも通りだ。



「そういえば、ふたりで展示会のディスプレイの打ち合わせしてたんだって?上手く決まりそう?」

「それなんですけど、さっきちょうど決まって……」

「あっ、3人ともー!ニュースニュース大ニュースー!」



3人でそう話をし始めたその時、割り込むような大きな声が誰のものかは顔を見ずとも想像がつく。

そう、それは葛西さんのもので、彼は廊下の端のほうから私たちを見つけ大きく手を振って駆け寄った。



「葛西さん、うるさい」

「だってだって、本当に大ニュースなんですよ!?」

「なにかあったんですか?」



相変わらず男のくせにわーわーとうるさい……。

つい眉間にシワを寄せる私の隣で、武田さんは首を傾げた。



「それが、結婚するらしいんですよ!黒木さん!」

「えぇ!?」



く、黒木ちゃんが!?結婚!?

彼氏がいるとは聞いていたけれど、初めて聞く結婚話に、私は驚き、望と武田さんは「おぉ」と感心するような声をあげる。