シルビア





「って、望!あんたは何飲むの?私が払う!」

「へ?いいよー、自分の分は自分で……」

「いいの!この前も買って貰ったし、おごられてばっかりなんてイヤ」

「えー……でもそういうところも凛花らしいねぇ」



降参したようにホットコーヒーの缶を指差す望に、私はお財布から小銭を出しそのコーヒーを一本買う。



付き合っている時からそう、私はおごられてばかりは苦手だし、一度こうすると言い出したら聞かないタイプだ。

それをわかり切っているからこそ、望はそれ以上は言わずに私から缶を受け取った。



「ありがと。いただきます」



にこ、と笑って伝えられた『ありがとう』。

その素直さに、意地っ張りな自分の心がほどかれる。



伝え、よう。私も。

言えないままの、『ありがとう』の気持ち。



「……私こそ、ありがと」

「ん?なにが?」

「その……ミルクティーとか、この前の花とか、その前に織田さんから庇ってくれたりとか、あと最初の絆創膏とかっ……」



言えずにいた『ありがとう』を、一気にあれもこれもと言う私に、その目は一瞬小さく驚いてみせた。

かと思えば「ぶっ」と噴き出し笑う。



「なっ!?なんで笑うの!」

「いや、だって……凛花、一気にあれもこれも言いすぎ。なに、お礼言ってないこと気にしてたの?」

「べ、別に気にしてたっていうか、お礼を言うのは人として当たり前でっ……」

「あははは!そうだけどさぁ、あー、おもしろい」



そこまで笑う!?人がせっかく勇気を出して謝ったのに……!

望らしいといえばらしい、そのバカにするような反応。



だけど、言われてみれば確かに私一気にあれもこれも言いすぎで変だったかも。

そう自らも思えてしまい、そんな自分がおかしくて、ついふっと笑ってしまう。