シルビア




あぁもう!バカ!私のバカ!

望の一言にいちいち顔真っ赤にしてどうするんだか!

あの男のことなんだから、『可愛い』だなんて言葉誰にでも軽々と言っているのに!



熱い自分の頬を抑えながらやってきた、1階下のフロアにある自販機の前。

スカートの裾からストッキングで覆った肌をのぞかせた足を止め、「はぁ〜……」と深く息を吐いた。



もう、終わった恋。別れた相手。そう分かっていても、やっぱり心は終わってくれない。

バカみたいにいちいち反応して、その目に、言葉に、揺れてしまう。



結局ディスプレイも望に影響されて決まってるし……あぁもう、なんなの私。

心の中で呟いて、飲み物を買おうとしたところでふと気付く。自分がお財布を持っていないこと。



「あれ、財布……」

「お財布なしで、どうやって飲み物買うつもり?」

「なっ!」



その声に振り向けば、後ろには私の黒い長財布を手に笑う望。

先ほどの部屋に私が財布を置きっ放しにしていたことに気付き、こうして持ってきてくれたのだろう。



「意外とそそっかしいんだから。はい、どうぞ」

「……悪かったわね」

「せっかくだし俺も飲み物買おーっと。なににしようかなー」



って、あんたのせいでしょ!

声を大きくしたくなるのをこらえ、財布を開く私に、望は先にお金を入れボタンを押す。

そしてガコン、と取り出し口に出た缶を一本私へ手渡した。



「え?」

「凛花は、今日もミルクティーでしょ?」



白いパッケージの、『ミルクティー』と書かれた缶。こんな缶一本にも、ほらまた、優しさを感じて心がぎゅっとする。

無言で小さく頷いて缶を手に取ると、そのあたたかさがじんわりと伝わった。