シルビア




「三好さーん、書類持ってきたよー」

「あっ宇井さーん!おかえりなさいっ、ねっ教えてほしい仕事があるんですぅ」



すると本当に急いで書類を持ってきたらしい望に、彼女はまた上目づかいで甘え出す。



くそっ……自分が可愛いのを知ったうえでその態度か!すごいな!

ていうか10こ上って、私まだ29だから9こ上だし……いや、まぁ大して変わらないけど。

でも10と9では感じ方がまた違うというか……心のなかでブツブツとつぶやいていると、目の前の葛西さんのデスクの上の、卓上カレンダーが目に入る。



『10月』の文字にふと思い出す、今週の日曜……10月18日が、自分の30回目の誕生日だということ。

って、織田さんの言う通り10歳上になっちゃうじゃん!!



突っ込むようにスパーン!とそのカレンダーを叩いて倒すと、そのままの勢いで鼻息荒く望から書類を奪った。



「へ?どうかしたの?」

「別に!なんでもないけど!!」

「なんでもなくないじゃん、ほら眉間にシワ……」

「シワ……?」



今この空気で追い打ちをかけるかのように『シワ』の一言を口にしたその能天気な顔を、ギロッと睨む。

それにはさすがの望も「ナンデモナイデス」と口を閉じた。



悔しい……ここまでバカにされて反論ひとつ出来ない自分が悔しい……!!

だって私、織田さんに勝てる要素ひとつもないもんね。

ちょっと仕事が出来るだけ……出来るといっても長年続けていれば出来て当たり前のことばかりで、見た目も年齢も可愛らしさも織田さんには勝てない。



っ〜……ああもう、もうっ……もーーー!!!

部署同士のこと、後輩のこと……尽きない悩みに、言葉にならない叫びを心の中であげた。