シルビア





『はい、これ』



そして本を取り手渡せば、その茶色い瞳の中に初めて自分が入り込む。

瞬間、一気に惹き寄せられた。



うわ、近くで見ると顔小さいな。目もまん丸で、肌も綺麗。なんかいい匂いもする。

頭の中にめぐる思考を、顔に出さないよう必死でこらえた。



『あ……ありがとう』

『どういたしまして。よく来てくれてるよね。美人だなーって思って見てた』



っておい自分!言い方が軽いぞ!美人だと思ってたのは確かだけど……もっと気持ちを、誠意を伝える言い方があるだろ!



『こら、宇井ー!喋ってないで仕事!』

『はーい。やべ、怒られちゃったから戻らないと』

『はぁ、じゃあ私はこれで』



それだけの会話を終えて、彼女は行こうとしてしまう。

けれど、折角話せたのにここで終わるのはいやだと、思ったから。振り絞った、勇気。



『あっ待って待って!折角だし、連絡先交換しない?俺、まだ君と話したいことたくさんあるし』

『へ?』



話したいことがたくさんある。

君のこと、俺のこと。たくさん、たくさん。



そんな必死さから出た言葉に彼女は笑って頷く……わけもなく、当然嫌な顔をして『いやです』と断られてしまった。

けど、そんな嫌な顔すらも嬉しかった。



これまで見つめるだけだった相手が、俺を見て、言葉を交わしてくれる。

気付けばもう、とっくに。俺は彼女に恋をしていたんだ。