「なんで言ってくれなかったの……?なんで、私になにも、教えてくれなかったの……?」
「……言えなかった。病気を理由に嫌われても、『一緒にいる』と言われても、どっちもつらいのは目に見えてたから」
「どっちも、つらい?」
「……大切な人にこの先苦労や迷惑をかけるかもしれない、そう分かってて『一緒にいて』なんて、言えないよ」
そうやって、いつも、いつだって私のことばかり。
「だから、黙っていなくなったの……?」
「……そう。浮気してる、って思われてるならそのまま、最低な男で嫌いになってくれたらいいと思った。別れ話も、しようと決めてたんだよ。……でも、出来るわけ、なかった」
一方的に疑われて、それでもなにひとつ話さず抱えた、そんな彼が別れを告げられなかった理由。
それは。
「出来るわけ、ない。凛花のことが、こんなに好きなんだから」
好きだった、から。
『さよなら』の一言も言えないくらい、好きでいてくれたから。
好きだから、別れを選んだ。
好きなのに、別れなきゃいけない。
その想いを抱えた心は、どれほどつらく痛かっただろう。
苦しく締め付けられただろうその心を思うだけで、この瞳からは涙がこぼれだす。



