シルビア






「打撲ですね」



会場から少し離れた位置にある、この辺りで一番大きな総合病院。

その救急外来のとある一室で、目の前の中年の医師は感心したように診断書を見てつぶやいた。



「だ……ぼく、ですか?」

「えぇ。強くぶつけた背中が腫れてますが、骨もその他も全部無事です。いやー、すごいですねぇ。頑丈な体でなにより」

「は、はぁ……」

「湿布だけ出しておきますね。あ、でも何日かしてまた痛んでくるようでしたら来てください」



それだけの話を終えると、医師にお礼をして私は診察室を後にした。



沢山の人が行き交う、大きな病院の会計待ちのロビー。その長椅子の一番端に座ると、安心感にため息をつく。



脚立から落下した私に、葛西さんや黒木ちゃんたちは悲鳴をあげ、音を聞きつけた他の社員さんたちは駆けつけ……と、一度は大騒ぎになった会場。

けれど実際、私は驚きはあったものの意識もはっきりしているし、すぐ起き上がることもできた。背中は少し痛かったけれど、それくらい。



騒がせたことを謝りまた作業に戻ろうとしたところ、『念のため病院へ』と黒木ちゃんにも強く言われ、渋々タクシーに乗ってひとり病院へとやって来たわけだけれど……。



結果は先ほどの通り、医師も感心するほどの軽傷だった。