シルビア




今日は、この会場に望もいるそうだけど、私は一度も顔を合わせていない。



というのも、ネクサス側のインテリアのディスプレイに人が足りないそうで、武田さんも望もそちらへ行っているから。

……それでも武田さんは朝一応顔を出してくれたけど、望はそれすらもなかったし。



やっぱり避けられてる、のかな。

まぁそうだよね。自分が望の立場だったら、するだけしていなくなって、普通の顔で会えるわけがない。

このままなんとなくなぁなぁで、よそに転勤したほうが、気持ちは楽だ。



……けど、そうするなら抱いたりしないでほしかった。

最初から他人のままで、触れたり、優しくしたり、抱きしめたりしないでほしかった。



キスもせず、涙も見せないでいてくれたら、微かな希望も感じずに終われたのに。



「凛花さん、ちょっと曲がってます」

「え?本当?」

「もうちょっと下に……」



下から見ている皆の指示にあわせ、高い脚立の上に立ちながらカーテンを画鋲でとめていく。



もうちょっと下……付け直そう。

そう、一度壁にさした画鋲を引き抜いた瞬間、予想以上についてしまった勢いに体はぐら、と後ろへ傾いた。



「わっ……!」



足元が浮く感覚に、重力が変わる。

それらに自分がどうなるかを把握するより早く、体は脚立の上から落下していく。



あ、まずい。

そう思った時には遅く、ゴッ!と体が床にたたきつけられると同時に、倒れた脚立のけたたましい音と、皆の悲鳴が響いた。



「りっ……凛花さん!?」