シルビア




「うん。だって俺女の子の下の名前はみーんな覚えてるもん。黒木ちゃんは紗英でしょ、山本さんは百合香、永田さんは智子……」

「わ、すごい。よく覚えてますねぇ」



って、言い訳かと思いきや本当に覚えてるし。

人の名前を覚えているのはいいことなのに、こいつが言うとどうしてこうもチャラついているように感じるのか……。



話すうちに目の前のもつ鍋はぐつぐつと煮え、皆は「わぁ」とそれぞれに器にとりはじめる。



「よかったね、皆協力してくれて」



不意にぼそ、と望がつぶやく。周りの皆の気持ちが鍋に向いている今、この会話はふたりだけのものだ。



「……ありがと、ね」

「ん?なにが?」

「手伝ってくれたことと……織田さんに言ったこと。嬉しかった」



周りに聞こえてしまわないように、だけど恥ずかしさに隠してしまわないように。

伝えた言葉に、その目は嬉しそうに微笑む。



「だって俺は、どんなに可愛い子より凛花のほうが大切だから」



言葉とともに、テーブルの下で重ねられたその手は、ひんやりとした大きな感触。



また、そんな軽々しいことを言う。こうして簡単に触れたりする。

そして懲りずに、この心はどきりと音をたててしまう。