シルビア






「かんぱーい!」



その後、残業を頑張った皆でやってきたのは駅前にある居酒屋。

もつ鍋の有名なその居酒屋の一室で、皆はビールやお茶の入ったグラスを合わせてわいわいと盛り上がる。



「いやー、それにしても宇井さんかっこよかったですね!」

「うんうん、『一番は誠実でいることだと思う』なんて……なかなか言えませんよねぇ」



先ほどのことを思い出しながらきゃーきゃーとはしゃぐ女の子たちに、私の隣に座っている望は「そう?」と目尻を下げて笑った。



……ていうか、なんでちゃっかり隣に座っているの。余計変な噂につながるじゃない。

けど露骨に席をずれることも出来ず、私は黙ってグラスのなかのビールを飲む。




「でもさっき織田さんも言ってたけど、ふたりが付き合ってるって噂って本当なの?」

「ぶっ!」



すると、向かいの席に座っていた武田さんの突然の問いに、思わず噴き出したビールが鼻に入って少しむせた。



「げほっ、ごほっ、な、ないです!ないですから!!」



むせながらも必死に否定をする私に、望は慌てておしぼりを手渡し口元に当てさせる。けれど一方では武田さんたちの腑に落ちない顔がこちらへ向いた。

その中で黒木ちゃんは思い出したように口を開く。



「そういえばこの前の騒ぎの時も、宇井さん凛花さんのこと『凛花』って呼んでましたよね」

「え!」



黒木ちゃん、あの時に気にしていなかったから気付かれていないと思いきや……気付かれていたんだ!

ど、どうしよう、なんて言い訳を……。



だらだらと背中を伝う冷や汗に、ちらりと望へ視線を向ければ、ビールではなく烏龍茶を飲むその顔はいたっていつも通り。