「……はぁ、」
小さな溜息が、狭い部屋にひとつこぼれる。
アクセサリー事業部フロアの一階上、13階フロアにあるこの部屋・商品管理室は、室内いっぱいに箱や荷物が積み上がった倉庫のようなものだ。
主に在庫管理や商品の発送準備を行うこの部屋で、私はひとり先ほど電話のあった取引先へ送る商品をひとつひとつ箱詰めしながら伝票を起こしていた。
全部で70店舗分……今日中に発送出来るかな。
皆に手伝って貰えば終わるだろうけど、それぞれやることだってあるし……そもそもは確かに、私の確認ミスでもある。
出来るかな、じゃない。してみせる!よし!
「凛花」
すると不意に呼ばれた名前に作業する手を止め顔を上げると、背後にある部屋の入り口にはいつの間にいたのか望の姿があった。
えんじ色のカーディガンに白いシャツという相変わらずカジュアルな服装をした望は、ドアによりかかりながらこちらを見る。
「……なによ。忙しいの、話ならあとにして」
「聞いたよー、織田さん泣かせたんだって?もうすっかり営業部がその話で持ちきり」
……って私の話は無視かい。
いたって普通に話を始める望に、私は会話を拒むようにまた作業を再開させる。
袋に特価品を詰めて、箱に詰めて、という簡単な作業。だけどこれだけの個数があれば、やはりそれなりに大変だ。
「悪かったわね、若い子泣かせるくらいきつくて」
「どうせ織田さんが問題起こしたんでしょ。最近あの子露骨に機嫌悪かったもんねぇ」
『織田さんが』、そう察して分かってくれる。私がなにも、言わなくても。
「それでも凛花はそうやって自分のせいにして、その尻拭いもひとりでやるんだね」
その優しい言葉とともに、頭をそっと撫でる手。
よしよしと、慰めるようなその手が分かってくれる。それだけで、心の中で張り詰めていた気持ちが緩み、また泣き出しそうになってしまう。



