「では、こちらの商品の方、来月出荷させていただきます。失礼致します」



それからしばらくして、営業を終えた私と望は取引先へ深く頭を下げると店舗を後にした。



「ふぅ……結構発注入りましたねぇ。さて、この後どうします?このまま次の店舗も行きます?」

「来て」

「え?三好さん?」



店舗のある建物を出て早々に、私は望の腕を引っ張り足早に歩き出す。

そしてよく晴れた天気の中、近くの公園のベンチに望を力ずくで座らせた。



「わっ、いきなりなに……」

「体調悪いでしょ。ここでちょっと待ってて、飲み物買ってくるから」

「えっ?なんで……」



その言葉を最後まで聞くことなく、私は望と荷物をベンチに置き去りにすると、公園の端にある自販機で冷たいお茶と温かいお茶を二種類買いまたベンチへと戻った。



「温かいのと冷たいの、どっちがいい?」

「……冷たいの、かな」

「はい」



日差しはあたたかいものの、11月の空気は冷たい。けれどこんな中でも冷たいものを飲みたいというということは、やはり具合が悪いのだろう。

お茶のボトルを受け取り一口飲むと、気が抜けたのかその顔色は一気に青白くなり、額には汗がにじむ。



「はー……目が回る。気持ち悪……」

「大丈夫?少し休んだらこのまま早退してもいいよ?」

「へーき……少し休めば、すぐよくなるから」



隣に座り、バッグから取り出したハンドタオルでその額の汗をそっと拭う。



「……よく分かったね。俺が、体調悪いって」

「昔から手が震えてる時は具合悪くて我慢してる時でしょ。体調崩しやすいくせにすぐ無理するんだから」

「へぇ、覚えてるもんだねぇ」



思い返せば、そう。

付き合っている時から、望は貧血気味というか、体調を崩しやすいタイプ。

だけどそういう時に『つらい』と言う人じゃなかったから。私はいつも、その微かな変化でようやく彼の本音を知る。