平常心、平常心……。
同僚として、職場の人間として最低限の仕事をこなすだけ。それ以上は考えるな、余計な意識はするな。
そう自分に言い聞かせて、望を呼ぶためにやって来た営業部。
閉められた白いドアは、アクセサリー事業部のものと同じもののはずなのに、この向こうにある部屋が営業部というだけでノックすらしづらい雰囲気を漂わせる。
ここを開けたらまた視線が一気に向けられるんだろうなぁ……うう、想像するだけで胃が痛い。
けど、行くぞ。よし。
そう意を決してドアをノックしようとした、その時。
「宇井さん、今日外回りですか?」
「うん。アクセサリー事業部の子と」
「お、いいね〜。女の子と外回りなんて羨ましいなー」
中から聞こえてきた声に、思わずノックしようとした手を止める。
この声は……望と、あと名前は知らないけど営業部の人、だよね。
彼らの話題がうちの部署の話、ということでついドアを小さく開け、中の様子を盗み見る。
するとそこには、仕事の合間だろうか、望と少し年上のような営業部の男性社員。そしてよく柳下さんといるまだ若い女性社員が、3人で話し込んでいた。
「誰と行くの?あの黒髪の子?」
「本当は黒木さんと行く予定だったんだけど、予定変更で三好さんと」
「三好さん、ってあれかぁ。スレンダーな感じの。アクセサリー事業部の主任だっけ」
「あはは、一応主任は葛西さんですよ」
か、葛西さん……他の部署では部下に見られてる……。
「でもいいなぁ、三好さん。美人だし、俺結構タイプなんだよなぁ」
「えー?いいですかねぇ」
え?タイプ?と男性社員の嬉しい言葉に浮かれたのもつかの間、すぐさま突っ込む女性社員の声は批判的だ。



