一方、その頃
日名田公園で1人、鈴はベンチに座ってボーッとしていた。
いつも三つ編みにしている長い髪はおろされており、瞼は泣き腫らした後が痛々しく残っている。
(……いい加減にせなアカンな。いつまでも猫1匹に泣いてる方がおかしいんや)
今朝、母親に言われた言葉が脳内で再生される。
“いつまでも泣いとったらアカン! たかが猫やろ? 寂しいなら、また違うペットでも探すか?”
母の言葉を思いだし、更に落ち込む鈴。
泣いてはいけない、と自分に言い聞かせているのに気分は晴れないし、ふとした瞬間に涙がポロリと零れる時もある。
「ネコちゃんのお姉ちゃんだ」
愛らしい声が耳に届き、顔を上げると目の前にカナが立っていた。
林の被害にあった2匹目のペット、チワワのココアの飼い主だった少女だ。
「カナちゃん、こんにちは」
痛む目を無理に細め、重たい口角を強引に吊り上げる。
だが出来た表情はとても笑顔とは言えないお粗末なもので、作り笑いであることには幼いカナも気付いていた。
「お姉ちゃん、どうして泣いてるの? どこかイタイの?」
「ちゃうねん…ウチのリン…死んでもうたんや…」
絞り出されたような鈴の言葉に、カナが息を呑んだ。
「だから泣いてたんだ…」
「せや…でも、おかんも泣いてばかりじゃアカン言うてたし、いい加減にせなな」
溜まってきた涙を片手で乱暴に拭うと、カナがそっと手に触れてきた。
「かなしい時は、泣きたい時は、泣かないとダメだって、カナのママが言ってたよ」
驚いて目を丸くする鈴に、カナは言葉を続けた。
