如月高校 2年A組 教室内
「……と、ここまでがテストに出る範囲だから、ちゃんと覚えておくように!」
黒板に記された文字をチョークで示しながら、担任教師の佐々木が言う。
担当科目である歴史の授業なので、佐々木は張り切った様子をみせる。
そんな佐々木の授業を黒斗は聞き流し、ボンヤリと窓の外を見やった。
丁度、グラウンドでは別のクラスが体育の授業を受けていた。
男子と女子に別れてサッカーをしているようで、男子のグループの中に見覚えのある銀髪が交ざっている。
(……アイツ、佐々木じゃないか)
他のクラスメートが素早く動きまわっている中、玲二だけは戸惑った様子で立ち止まったままだ。
(相変わらずどんくさいな……)
「コラ、月影くん! 聞いてるの!?」
黒斗がよそ見をしていることに気づいた佐々木が注意するが、彼は外の観察に夢中で聞こえていない。
グラウンドを見つめ続ける黒斗。
さすがに動かなければヤバイと思ったのか、ようやく玲二が走り出した。
だが
(あ、マズイ)
黒斗がそう思った刹那、玲二の顔面にサッカーボールがぶつかり、そのまま仰向けに倒れこんでしまった。
「ハア……バカだな……」
「誰がバカですって?」
傍らから声が聞こえて、そちらに視線を向けると、眉間にシワを寄せた佐々木が立っていた。
「何だ、いたのか」
「何だ、いたのか……じゃないわよ!! いつもいつも私の授業を聞き流して! バツとして、今日は多目に宿題を出すからね!」
すっかりご立腹の佐々木は、言うだけ言って教壇に戻っていった。
「クスクス……」
内河の笑い声を聞きつつ、黒斗は視線を黒板に戻した。
