半ば強引に黒斗の舎弟となった玲二は、スキップでもしだしそうな軽い足取りで、とある場所へと向かった。
住宅街にある、2階建ての一軒家に辿り着いた玲二はインターホンを鳴らす。
ピンポーン
小気味よいチャイム音が響いたあと、ドア越しから女性の声が聞こえてきた。
『はい、どちらさま?』
「佐々木です! 洋介(ようすけ)居ますか?」
『あら、玲二くん。いらっしゃい、今開けるわ』
ロックを外す音が聞こえた後、扉がゆっくりと開かれる。
現れたのは泣きホクロが特徴的な、ショートヘアの主婦だ。
「洋介なら部屋に居るわ、どうぞ」
主婦に促された玲二は、お辞儀をしながら家に上がる。
勝手を知っている様子の玲二はスムーズに2階へと上がり、“洋介”と書かれた札が付いている扉の前に立ち、ノックをした。
「どうぞー」
爽やかな声音が聞こえ、玲二は扉を開く。
「洋介ーっ!」
いきなりハイテンションで部屋に入り込んだ玲二だが、部屋の主は特に驚いた様子もなく、椅子に座ったままだ。
「聞いて聞いて! 今日、すっごく良いことがあったんだ!」
荒い鼻息のまま、玲二は椅子に座っている少年へと近付いた。
少年の足元には大きなキャンバスが置いてあり、デッサンの途中であろう絵が描かれている。
「へえ、何があったの?」
振り向くことなく、少年はキャンバスを見つめたまま、鉛筆を持つ右足を器用に動かし、デッサンを続けている。
「あのね! 学校の先輩に、舎弟にしてもらえたんだ!」
思わぬ言葉に少年の動きが止まり、勢いよく振り向いた。
「舎弟!? 良かったじゃないか玲二! やっと学校で相手にしてくれる人が出来たんだ!」
バンザイのポーズでもしそうなテンションで、自分のことのように喜ぶ少年には両腕が無かった。
