「ところで、お前は何をやってたんだ? 何かを描こうとしてたようだったが」
突然、話題が自分のことになり、玲二がビクリと肩を強張らせる。
「あ……いやー、ちょっと画家さんになった気分を味わいたかっただけですよ」
「……絵を描くのが好きなのか?」
大げさに手を振って、否定する玲二。
「とんでもない! オレ、絵心とか無いし芸術とかサッパリなんで!」
にこやかに笑う玲二だが、黒斗は彼の嘘を見破っていた。
死神である黒斗には、人間の魂の状態が手に取るように分かる。
感情はもちろん、罪を犯した回数も黒斗にはお見通しなのだ。
先程、震えていた時の玲二の魂は恐怖を感じていた。
彼が感じた恐怖は、何が原因なのかは分からない。
だが、玲二自身が話したがらない為、黒斗もそれ以上は聞かないようにする。
「……まあ、いい。じゃあな」
下履きを持って美術室を後にしようとする黒斗だったが、不意に右腕をグイッと引っ張られる。
「あのっ! 待って下さい! お、お願いがあるんです!」
「お願い……?」
渋々と振り向いた黒斗の目に映る玲二は、非常に真剣な表情をしていた。
「何だ? 言ってみろ」
「はい……」
黒斗の右腕から手を離し、1、2歩ぐらい後ろに下がる。
ゴクリと生唾を飲み込み、玲二は勢いよくお辞儀をした。
