「知ってるし、別に美術部員でもない。下履きを取りに来たんだ」
素っ気なく答えると、黒斗は美術室内の探索を始めた。
机の下や後ろのロッカーなどを馴れた手つきで探る黒斗を、玲二はキョトンとしたまま見つめている。
「お、あった」
教壇(きょうだん)の下に隠してあった下履きを発見し、黒斗はやれやれと溜め息を吐いた。
「あ、あのー……何で美術室に下履きが?」
「うちのクラスのバカが隠したんだ」
「ええーっ!? 先輩みたいな強い人でも、いじめられてるんですか!?」
ひどく驚いた様子をみせる玲二。
「別に、いじめられてる訳じゃない」
何でもないように答えるが、玲二は「本当ですか?」と言うようなジト目で見つめてくる。
嘘ではなく、本当のことだ。
内河の“下履きを隠す”という行為は、黒斗が鈴と親しくなった頃から始まっているが、単に“下履きを隠す”だけなので、いじめかいじめではないかと聞かれれば、違うだろう。
正しくは“恋敵への嫌がらせ”というべきか。
「……まあ、うざったいのは間違いないけどな」
ポツリと呟かれた黒斗の言葉に、玲二は「いろいろ大変なんですね」と同情の目を向けた。
