学校へと向かう道すがら、肩に背負った少年と自己紹介を交わした。

少年の名前は佐々木 玲二(ささき れいじ)。

年は15歳で、学年は1つ下の1年生である。



「すいません、ご面倒おかけしました」

「歩けるか?」


黒斗の言葉に玲二は頷き、肩に回していた手を外し、自分の足で立つ。

「何とか治ったみたいです! ありがとうございました、月影先輩!」


敬礼のポーズをとり、ヨロヨロと歩き出す玲二の背中を見送る。


すると


「やーい! ノーローマー!」

「ふわっ!?」

颯爽(さっそう)と現れたオールバックの男子生徒に、手に持っていた鞄を引ったくられてしまった。


「か、返してよー!」

「返してほしけりゃ、追い付いてこいよー!」


男子生徒を必死に追いかける玲二だが、その動きは鈍重で、追いつくのは難しいだろう。


「本当にどんくさい奴だな……」


独り言をもらしながら、黒斗は昇降口に向かった。