騒ぎを聞きつけた黒斗が日名田公園に辿り着くと、公園の周囲には大勢の人だかりが出来ていた。
人がロクに寄りつかない寂れた公園が、一番注目を集めたのが事件が起きた時とは、なんとも皮肉な話である、と内心思いながら人の群れを掻き分けていく。
最前線に立てた黒斗は、リンを抱きしめたままの鈴が警察から話を聞かれている所と、カナが母親に抱きついて泣きわめいてる場面を目撃した。
数分後、話を終えた鈴が黒斗に気づき、駆け寄ってきた。
「クロちゃん、来てたんか…」
「騒がしかったからな……何があった?」
黒斗の問いに、鈴はうつむきながら答える。
「昨日、公園でチワワ連れてた子、覚えとる?」
黙って黒斗が頷くと、鈴は続けた。
「その子のチワワがな……酷い殺されかたをして、鉄棒に吊るされとったんよ…」
「……そうか」
互いにそれ以上何も言わずに、人だかりを抜けていく。
「…………こないだ大神くんが言うとった、猫の殺害事件と犯人が同じかもしれへんって……」
人だかりを抜けた鈴が立ち止まり、肩を震わせながら拳を握りしめる。
「……何で…こんな酷いことをすんのや……犬も猫も……ウチらと同じで、生きとるのに…!」
「……動物の命は、軽く見られることが多い。皆が橘みたいに、動物の命を重んじれる訳じゃないんだ」
鈴は何も言わず、顔をうつむかせたままだった。
(ククッ…あのガキ、大泣きしてるな)
人の群れに紛れ、カナの様子を見ている林は必死に笑いを堪えていた。
カナの行く先を先回りした林は公園に、ココアのむごたらしい死骸を設置し、わざとカナが目撃するように仕向けたのだ。
最初のネネという猫も同じように、飼い主が最初に見つけるように死骸を置いた。
(こんなことぐらいで泣くガキの気持ちがわかんねえな。俺の方が、もっと悲惨なめにあってんだよ)
心の中で毒づく林。
「っ!!」
その時、激しい悪寒が林を襲い、同時に殺気を含んだ視線を感じた。
(だ、誰だ…?)
気味の悪い感覚に、林は冷や汗を流しながら周囲を見回し、視線の主を探す。
「!」
ほとんどの人間が現場に視線を向けている中、林は己を真っ直ぐに見つめてくる少年……黒斗の存在に気づいた。
(チッ、気持ち悪いガキだ!)
血のように真っ赤な瞳で、射抜くような視線を送ってくる黒斗に嫌悪感を抱いた林は、足早にその場を立ち去った。
「…………今回で2回目……」
ポツリと呟かれた黒斗の言葉は、誰にも届くことなく消え入った。
