「…………は?」

驚きの余り、それ以上の声が出ない少年。

放心したように口を半開きにしながら立ち尽くす彼の目の前には、銀色が広がっている。

その銀色は不気味に きらめいており、とても大きい。

そして、包丁なんか比べ物にならない鋭い刃が付いていた――



「なっ、なっ、な……!?」


壁に突き刺さっているものが刃物と分かるや否や少年は我に返り、顔から血の気が引いていく。

見たことのない巨大な刃物に戦慄する少年。

そんな彼の首を、突然 横から伸びてきた手が掴んで、壁に身体ごと叩きつけた。



「がっ……」


衝撃で一瞬 息が詰まり、少年は目眩に襲われる。

二重三重になって見えるボヤけた視界の中、彼は襲ってきた者の正体を確かめるべく、必死に目を凝らして目の前に居る“誰か”を見やる。


だが、その“誰か”の姿を見た刹那、少年の目が信じられないとばかりに大きく見開かれた。


「……な、なんだよ……おまえ…………」

震えて裏返った声を発する少年。

そして そんな彼の首を掴んでいる人物、それは――


髑髏(ドクロ)の仮面を着け、闇に紛れそうな漆黒のフードを身に纏い、身の丈以上の大きさを持つ巨大な鎌を持った――“死神”だった。




「何度目だ?」

「は……ぁ?」


質問の意図が解らず、疑問の声を漏らす。

だが、その反応が気にくわなかったのか死神の首を掴む力が更に強まった。



「人から金を強奪したのは何度目だ?」


そんなことを訊いてくる理由が分からない少年は眉を潜めるが、下手に反抗して絞め殺されることを危惧し、大人しく返答する。



「た、確か……3回……多分、今日で3度目だ!」

「……そう、3度目だ。自分が犯した罪の数を覚えていた事に関しては褒めてやろう。だが……」


壁に刺さっていた大鎌が引き抜かれ、少年に鋭い切っ先が向けられる。



「お前はやりすぎた。犯した罪に対する罰を受けてもらう」


抑揚なく紡がれた言葉を聞いた刹那、少年の穴という穴から一斉に汗が噴き出した。