「言いたいことがあるなら言えよ」

「しっ!」

慌てて鈴が黒斗の口を塞ぐ。



「…………」



気まずい沈黙が、その場に舞い降りる。





「…………あの三毛猫は、橘の飼い猫?」

沈黙を破ったのは意外なことに大神だった。

驚いた鈴は一瞬言葉を失うが、すぐに気を取り直して質問に答える。


「せや。名前はリンっちゅうんや! かわええやろー!」

「ああ。とても可愛いよ」

「やっぱり!? そうやろー! めっちゃかわええやろー!」

「……飼い主バカめ」


黒斗がポツリと呟くが、愛猫を褒められて有頂天になっている鈴の耳には入らない。

「でも、気をつけた方が良い」

「え? 何に?」

一呼吸おいて、大神が口を開く。