「橘ー!!」

ドタドタとやかましく階段を駆け下り、ダイニングで辺りをキョロキョロと見回している鈴に呼びかける。


「あ、おはよクロちゃ……」

「これは何だ!?」


挨拶をしようとした鈴の言葉を遮(さえぎ)って、黒斗はズイッと手に持っていたモノを突きつける。

黒斗の手に握られていたのは、まだ小さな三毛猫だった。

猫の姿を確認した途端、鈴がパアッと明るい笑顔を浮かべる。


「おおー! 見つかって良かったー、何処におったんやリンー!」

「ミィー」

リンと呼ばれた子猫は、黒斗の手から逃れると鈴の足に頭を擦り付けた。


「……おい……その猫は何だ?」

黒斗の言葉に鈴は、足下の子猫を抱きかかえてニッコリと笑った。


「聞いて驚けー! 実はな……この子、拾ったんやー!」

「…………は?」

ジャジャーン、と効果音でも付きそうなテンションで放たれた鈴の言葉に、黒斗は呆気にとられる。


「やっぱり驚いてるやろ? まあ、そりゃそうやろな、フッフッフ!」


正直、驚いたのは鈴の異様に高いテンションになのだが、面倒くさいのでここは黙っておく。