「うわあああああああああ!!」

 それを見た平田が悲鳴をあげるが、江角は満足そうに笑っている。


 噴き出ていた血がおさまると、江角の目に心臓がうつった。



 黒斗の持つ鎌に刺さり、血が滴り落ちている心臓は脈を打っており、血管で江角の身体と未だに繋がったままだ。



「……アハッ……き、れ……い………」


 鎌に刺さった心臓が砕け散り、跡形もなく消え去ると、江角は倒れて事切れた。


 その死に顔は満足そうに笑っていた。



「…………」

 江角の死亡を確認した黒斗は振り返り、うずくまって嘔吐している平田の元へ歩み寄る。



「うげえぇ……ゲホッ……」

 咳と嘔吐を交互に繰り返す平田は、黒斗に気付くと青ざめた顔でガタガタと震えた。


「イヤだあああぁ!! 死にたくないっ!! 頼む、助けてくれえぇっ!!」

 恐怖に叫ぶ平田の口を、黒斗は血濡れた手で塞ぎ、彼を射抜くような眼で睨む。


「お前には全ての真実を公表し、田島の無実を証明してもらうという大事な役目があるからな。殺しはしないさ」


 そう言うと黒斗は鎌の切っ先を、平田の首に突きつける。


「言うとおりにしなければ……殺す。何処に逃げても無駄だからな」

 涙を流しながら頷く平田の反応を見て、黒斗は手を離す。


「今まで積み上げてきた功績と社会的地位を全て失う。それがお前の受ける罰だ」



 背後に開いた黒い穴に入り、そのまま黒斗は姿を消した。




 ドンドンドン


 玄関から騒がしいノック音が響く。

「江角さん、大丈夫ですか!? 銃声がしたという通報を受けたのですが……」

 立ち上がる気力もない平田は、放心したまま江角の死体を見やる。

 すると江角の傷口は塞がり、消え去っていった。