デスサイズ

ガヅッ




鈍い音が鳴り響き、ウシオの身体がドサリと横たわった。


「……はぁ……はぁ……」

倒れているウシオの頭部からは血が流れ、顔に赤い線を描いていく。


そんな彼を見下ろすシローが持つ懐中電灯には、血糊(ちのり)がベッタリと付いている。



「し、シローさ…………な、にを……」

起き上がろうとするウシオだが激しい頭痛と目眩、そして全身の痺れのせいで身体が思うように動かない。



「……お前に何が分かる」

ポツリと呟いたシローの目は、常人のものではなかった。

狂気を滲ませた目と低い声にウシオは、かつてない恐怖を覚える。


「気持ち分かりますよ、だって? 俺がどれだけ悲しんで苦しんだのか分かるのか? 分からないだろう!! お前の想像を遥かに上回る苦悩を、今も俺は抱えてるんだっ!!」


倒れるウシオの首を掴み、再び血糊が付いた懐中電灯を振り上げる。


「過去を忘れろ? 忘れようとしたさ! だけど忘れられなかった!! 似ている人間を見る度に昔の俺や家族がチラついて、あの惨めな思いが、苦しみが、悲しみが、甦るんだ!!」



何度も何度も頭部を懐中電灯で殴打されたウシオは既に絶命している。

それでもシローはウシオの亡骸(なきがら)を殴り付けることを止めない。



シローだって出来れば過去を忘れたかった。


だが忘れられなかったからこそ彼は苦悩し、似ている人間を衝動的に殺めてしまった。

それなのにウシオはシローの苦悩を知らずに、「忘れましょうや」と軽く言った。



シローはそれが許せなかった。

ウシオの軽々しい発言が、安っぽい同情が。


もともと不安定だったシローの精神は、ウシオの無神経な励ましによって完全に崩壊したのだ。