河川敷
沈んでいく夕日を眺めながら、シローはボンヤリと座り込んでいた。
右手には勿論、懐中電灯がしっかりと握られている。
(……あの女さえ消せば、もう過去を思い出させる物が無くなる)
奈美子の顔を思い浮かべながら、シローは小石を川に向けて投げる。
やはり石は跳ねることなく、水の中へと沈んでいった。
“……いくら似ていても他人は他人……お前の家族が死んだ訳じゃないし、お前の過去が消えた訳じゃない”
“彼らを殺して何かを得られたのか?”
昨夜、黒斗に言われた言葉が頭の中でリフレインする。
分かっている。
彼らは似ているだけで本物ではないし、殺して得られたのは一瞬だけの快感、人殺しの罪、虚しさだけだった。
シローも、自分がやってきたことに意味が無いのは分かっているし、人の命を奪って何も感じない程、堕ちてはいない。
だが、今さら止めることなど出来なかった。
一度、奈美子に重ねた妻の面影は消えない。
奈美子を見る度にシローは妻を思い出し、憎しみと悲しみに支配される。
過去を思い出したくない、消し去りたいシローは奈美子の存在が許せないのだ。
手頃な大きさの石を拾って懐(ふところ)に入れると、ゆっくり立ち上がった。
