繁華街を出たシローは河川敷に辿り着き、川の近くで座り込んだ。
(ふいー……ちっと休憩してから石を探すか)
大きく身体を伸ばしてリラックスするシロー。
ちなみに石を探してどうするのかと言うと、答えは凶器に使うことである。
たかが石、されど硬い石。
コレで思いきり脳天を殴られれば、致命傷を負ってしまうのだ。
(たくっ、アイツらのせいで余計な疲れが出ちまったぜ)
先程のカップルの顔を思い浮かべ、苛立ったシローは石を拾って川に投げる。
投げられた石は水面で跳ねることなく、ポチャンと音を立てて沈んでいった。
(どれだけ人間が汚い生き物なのか知らずにイチャイチャと……本当にガキってのは頭が悪いぜ)
「ガキで頭が悪いのはお前も一緒だろう」
背後から声が聴こえると同時に寒気を感じ、シローは素早く懐中電灯を点けて後ろを照らした。
目映い光に照らされながら立っているのは黒斗だ。
「来やがったな死神!」
咄嗟(とっさ)に身構えるシロー。
だが黒斗が動く気配は無く、服装も漆黒のコートではなく普通のジャケットだ。
「……そう身構えるな。今日はお前を断罪しに来たんじゃない……忠告をしに来たんだ」
「忠告だあ?」
懐中電灯の光を黒斗に当てたまま、シローは訝しげな表情を浮かべる。
「……お前は、奈美子という女の殺害を考えているな? 悪いことは言わない……これ以上罪を増やすな……後悔するぞ」
「忠告じゃなくて脅(おど)しか? ハッ! 今さら何を言われてもやめる気はねえよ! あの女は必ずぶっ殺す!」
「何故そこまで、あの女の殺害にこだわる?」
「気に入らねえから、それだけだ!」
黒斗の問いにドヤ顔で答えるシロー。
対して黒斗は呆れたように、ゆるゆると首を振る。
「……やっぱりお前は“ガキ”だな。年をとったのは身体だけ、中身は幼稚で嫌なことがあったら泣き喚いて不機嫌になって、辺り構わず八つ当たりする駄々っ子のまま成長していない」
「ハア!?」
聞き捨てならない言葉にシローが恐ろしい顔で黒斗を睨みつけるが、彼は動じることなく言葉を続ける。
「お前は奈美子に、妻の姿を重ねているだけだ。憎くて仕方ない裏切り者の妻、復讐したくても奴がどこに居るのか分からない……だから似たような女を殺して、妻に復讐した気分に浸ろうとしている」
「…………っ」
何も答えられないシロー。
