(……いつもの河川敷(かせんしき)に行くか)
しばらく悩んだ末、1人になりたい時よく行く河川敷で時間を潰そうと思い立ち、シローは急に駆け出した。
「きゃっ」
前方不注意だったうえ、いきなり走り出した為に華奢(きゃしゃ)な女性とぶつかってしまった。
シローは少しよろめいただけで済んだが、女性の方は勢いよく倒れてしまう。
「ああっ、るり大丈夫か?」
女性の隣を歩いていた彼氏らしき人物が彼女を抱え起こす。
「イタタ……何とか大丈夫」
「そうか、良かった」
頭を強く打ってたらどうしようかと思っていた彼氏がホッと胸を撫で下ろした。
「……ふん」
カップルの様子を見ていたシローは鼻で笑うと、その場を立ち去ろうとする。
しかし、後ろから肩を掴まれてソレを阻まれた。
「おい! ぶつかっておいて謝りもしねえのかよ!」
シローは振り返り、肩を掴む彼氏を睨みつける。
「ケガは無かったんだ。別に良いだろう」
「ケガの有無の前に、ぶつかったら謝るのが常識だろ!」
「お前らがくだらん話でよそ見してたのが悪い」
「何だとクソジジイ!」
謝るどころか、こちらに責任転嫁(せきにんてんか)してきたシローの態度に彼氏は頭に血が登り、拳を振り上げた。
「待って哲(さとし)! そんな奴、殴る価値も無いよ! それにお年寄りをケガさせたら哲が悪者になっちゃう」
彼女の説得を受けて、彼氏は振り上げていた拳をゆっくりと下ろし、シローの肩からも手を離した。
「す、すまねえ……お前の言う通りだな。間違いを正してくれてありがとう」
「ううん。哲も私の為に怒ってくれてありがとう、嬉しかったよ」
手を繋いで微笑みあうカップル。
「けっ、綺麗事ばかりほざいてんじゃねえよ。身体が痒(かゆ)くなっちまうぜ」
尻をボリボリ掻きながらシローは続ける。
「若造共、教えてやるよ。愛してるだの何だの甘い言葉を囁(ささや)かれていたって、相手は裏では何を考えてるか分かったもんじゃないぜ?」
「…………」
カップルは何も言わずにシローを見つめている。
「例えば小娘、お前の彼氏は身体だけが目当てのケダモノかもしれんぞ? お前の身体に飽きたら簡単に捨てられるかもしれない。それとも小娘の方が、金目当ての交際をしてるのかね」
「…………最低」
いやらしい表情を浮かべるシローに一言呟いて、カップルはシローの横を通りすぎて行った。
「愛なんて無いんだよっ! お前らの結末は破局だ! どちらかが必ず裏切るか捨てるぞ!」
立ち去るカップルの背中に向かって声をかけ続けるシロー。
しかしカップルが無反応だった為、興味を無くしたのか彼らとは逆方向に歩き出した。
「ハア……何だったんだ、あのジジイ」
「さあね……ただ哀しい人だとしか言いようが無いわ」
