──何度目だ?
「っ!?」
突然 誰かの声が聞こえ、驚いた平田が部屋を見回した。
「どうしたの?」
平田の不審な行動に、江角が訝しげな視線を送る。
「今……声がしなかったか? 男の……」
「いいえ、聞こえなかったわ。大体、他に誰か居る訳ないでしょ。空耳じゃない?」
特に気にしていない江角だが、平田には確かに声が聞こえた。
そして今も、江角ではない誰かから見られているような不気味な感覚がしている。
気味が悪くなった平田は立ち上がり、警戒の態勢をとった。
「おかしい……人の気配を感じる!」
「変なことを言わないでよ。誰もいないじゃない」
呆れたような言い方をする江角だが、平田は警戒をとかない。
気配はすれども姿は見えず。
この奇妙で不気味な感覚に、平田の脳裏にある考えが過った。
「まさか……死神が俺達を殺しに来たんじゃ……」
「死神って、あの無差別に人を襲ってるってアレ? 馬鹿馬鹿しいわね……死神だって騒がれてるだけで中身は ただの人間でしょ?」
幽霊やU.F.Oなど、非現実的なものを信じない江角は死神など居ないと吐き捨てるが、平田が食いかかる。
