デスサイズ

 夕日も沈み、空に月が出てきた時刻。



(…………んっ)

 尿意を催したシローは起き上がり、背伸びをした。



(ふわあああ……よく寝たぜえ。丁度いい頃じゃないか)

 敷いている新聞紙の上で暗くなり始めた空を見上げると、シローは懐から懐中電灯を取り出し立ち上がった。



 僅かな缶を金にした後シローはのばら公園に戻り、夜に備えて睡眠をとっていた。


 また今夜も黒斗が襲ってくる可能性を踏まえての睡眠である。

 死神が寝込みを襲わないとは限らない――だから昼になるべく睡眠をとって、夜は日が昇るまであげようと考えた。





 公園の中心辺りまで来ると、ウシオを始めとする他の仲間達が他愛ない話で盛り上がっていた。


「おや、シローさん。今からお出かけですか?」

 マリコという名の老婆がシローに気づいて声をかけると、他の者も一斉に彼を見た。

 注目を集めたシローは居心地が悪そうに顔を背けると、そのまま無視して公園の出口に向かう。


「おいおい、何か言ったらどうなんだよ!」

 四十代後半の坊主頭の男が怒鳴るが、シローは動じることなく立ち去って行った。



「まったく、愛想も何も無いクソジジイだな! とっととくたばっちまえ!」

「これ、そんなこと言うもんじゃないよ」


 坊主頭の隣に座っていたキツネ目の老婆が不謹慎(ふきんしん)な発言を注意する。



「シローさんは誰とも仲良くしようとしないなあ。昔からあんな偏屈だったのだろうか」

「ハハハ、あれでも若い時は純粋だったんだよ? お人好しで仕事熱心かつ愛妻家(あいさいか)で有名だったねえ」


 過去を懐かしむようなマリコの言葉に、ウシオが驚いて目を丸くする。



「純粋……想像がつかない……というか詳しいですねマリコさん」

「まあアタシはシローさんのお店の常連客だったからねえ。シローさんとは割りと仲が良かったし。あんなことが起きる訳まで」

「あんなこと?」



 気になる言葉が出てきてウシオはマリコに詰め寄った。



「あれはまだシローさんが五十代の時の話だけど…………」


 マリコが語り始めたシローの知られざる過去話を、ウシオや他の仲間達は黙って聴いた。