「……昨日、帰り道でさ……あんまりこう言いたくはないけど……ホームレスのお爺さんを見かけたんだ」
「ふんふん」
鈴が相づちを打ち、玲二は言葉を続ける。
「缶がいっぱい入ってる袋を重たそうに引き摺ってたからさ、運んであげようと思って声をかけたんだ。そしたら……」
「そしたら……どうなったんや?」
「こめかみに思いっきりパンチを食らわされてKOされました! その後、『俺を騙そうったってそうはいかねえぞ!』って台詞をはいて立ち去られました!」
「ハア!?」
あまりにも理不尽かつ不条理な結末に、鈴が怒りを露に声を張り上げた。
「何やねん、そのオッサンは! 意味分からんわー!」
「まあまあ……オレがお節介すぎたんだよ、きっと」
玲二が宥(なだ)めようとするも、鈴の怒りはおさまらない。
「なおさら意味分からん! レイちゃんは善意で助けようとしたのに、騙そうったってとか何とか……被害妄想にも程があるで!」
「殴られた佐々木よりお前が怒っても仕方ないだろ……」
「クロちゃんっ!!」
黒斗をキッ、と睨みながら鈴が詰め寄ってきた。
「舎弟が理不尽に殴られとるんやで!? それなのにクロちゃんときたら、ちっとも怒らへんし……冷たすぎるんちゃう!?」
「……怒っても佐々木の青アザが消える訳じゃないだろ」
黒斗の先程の言葉は、落ち着けという意味合いの言葉だったが逆効果だったようだ。
「す、鈴ちゃん大丈夫だよ! オレ、兄貴から冷たくされるの慣れてるから!」
「慣れてるって…………クロちゃん! 兄貴なら、もうちょっと舎弟を可愛がったらどうやー!」
玲二のフォローが更なる爆弾投下となり、火に油を注いでしまった。
「だいたいクロちゃんは冷たすぎや! いつもブスっとしとって、そんなやからネクラ言われるんやで!」
(……何で俺が朝っぱらから説教されなきゃならないんだ……)
怒りの矛先を向けられた黒斗は、昨夜から続く不運にげんなりするのだった。
