翌日の朝――
黒斗は自室の鏡の前に立っていた。
「……………………」
険しい表情で鏡に映る自分の顔を見つめる黒斗。
左目には昨日、シローに石をぶつけられて出来た傷が未だに残っていた。
出血は止まっているが皮膚には裂け目があり、その箇所を中心に瞼(まぶた)が腫れている。
そっと傷口を指でなぞると、ズキリと痛みがはしった。
(……やっぱり再生が遅かったか…………完治にはもう少しかかるな)
深い溜め息を吐きながら左目に眼帯を付ける。
(昨夜はしくじった……弱みを握られてしまうとは……)
黒斗の弱点はシローが言っていた通り“光”である。
実は黒斗は死神の中では、能力が低い部類に入る。
強い力を持つ死神ならば、光があろうが無かろうが関係なくその力を振るえるのだが、黒斗のように弱い者は光ある場所で死神の力を失う。
死神の象徴であるデスサイズも溶かされ、魔力も封印されてしまうのだ。
力が未熟であることも黒斗が“出来損ない”と呼ばれる理由の一つでもある。
(厄介なことになった……どうにか上手いこと裁かなければ……奴が“四度目”の犯行を犯す前に……)
眼帯を付けた自分の顔を一瞥(いちべつ)した後、部屋を出て、騒音が響くリビングに向かった。
リビングに辿り着くと、シンクでジャバジャバとフライパンを洗っている鈴の背中が見えた。
「あっ、おはよークロちゃ……」
黒斗に気づいて振り向いた鈴が大きく目を見開いて固まった。
どんな反応をされるか 大体予想出来た黒斗は、事前に言葉を考えておく。
「…………クロちゃんっ、どないしたんや、その目はっ!!」
シミュレーション通りの言葉を紡ぎながら、鈴は手に洗剤の泡をつけたまま駆け寄ってきた。
「……お前……泡が……」
床に落ちた白い泡を何処か遠い目で見つめる黒斗だが、鈴は お構いなしに詰め寄ってくる。
「泡なんて拭けばエエ話やろ! それより、何で眼帯しとるん!? キャラチェンなんか!?」
「……キャラチェン……?」
予想外かつ謎の単語に首を傾げるが、気を取り直して予(あらかじ)め用意しておいた答えを言う。
「……ものもらいで腫れてるんだ」
「あー、なるほど。お大事にな!」
あっさりと信じた鈴はニッコリと笑ってシンクに戻り、途中で放り出したフライパンを洗い出した。
「ウチ、洗い物しとるから先に食べとってや!」
鈴に促され、黒斗は席に座った。
テーブルの上にはヒトデのような歪(いびつ)な形をした緑色の物体。
