デスサイズ



「チック……ショオオオ!!」

 シローは懐中電灯を手に取るとスイッチを入れて、目眩ましのつもりで光を黒斗に向けた。


「っ!?」

 目映い光に黒斗は驚き、片手で目を覆った。


「ハア、ハア…………」

 シローは光を黒斗に当てたまま、彼の様子を伺う。



 すると黒斗が持っていたデスサイズはドロリと形が崩れ、やがて溶けるように消え入った。


「鎌が、消えた……!?」

「チッ……」

 驚くシローと、舌打ちをする黒斗。


 そんな黒斗の左目には切り傷があり、そこからドクドクと血が流れ落ちていた。



(血が出ている……? さっきは治っていたのに……それに鎌も光を当てられて消えたような……………………まさか)

 ある考えに至ったシローは起き上がり、光を当てながら黒斗に近づいていく。



「……お前、光が弱点なのか?」

「……………………」

 黒斗は何も答えなかったが、忌々しそうに細められた右目と、若干焦りが見られる表情からシローは確信した。



 コイツは光に弱いと。



「なるほどねえ……光があると鎌も出せないし傷も治らない……死神ではなく、ただの“子供”になる訳だ」

「…………だから、どうした」


 にじりよるシローと、後ずさりする黒斗。

 先程とは形勢逆転だ。



「……つまり、今なら殺せる訳だ」

 そう言い放つとシローは積まれていた酒ビンを手に取った。


「皮肉な話だな! 死神が人間に死を与えられるなんてよ!」

 シローは酒ビンを振り上げながら黒斗に走り寄った。



「……そう簡単に殺されない」

 黒斗はポツリと呟くと、高く積まれているダンボールを思いきり蹴飛(けと)ばした。



 ガタガタガタ



 ダンボールは音とホコリを立てながら黒斗とシローの間に倒れこむ。


「チッ、小癪(こしゃく)な真似を!」

 行く先をダンボールに遮られたシローは苛立ちを露に叫ぶ。


 ダンボールの山の向こうに、黒斗の姿は無い。



「……逃げられたか……まあ、いい。こっちには電灯がある……これなら奴も迂闊(うかつ)に来れない筈だ」

 懐中電灯を持ったままシローは路地裏を出て、繁華街に戻った。


 繁華街には、さっきまで居なかった人が数えきれない程歩いていた。