その日の夜――
「あら、奈美子(なみこ)さん。素敵なお召し物ねえ」
「ウフフ。旦那に おねだりしたのよ」
住宅街の角先で、真っ赤なドレスを着た奈美子という名の中年女性と買い物袋を持った年若い主婦が会話をしている。
奈美子は今朝ウシオに暴力を振るっていた主婦であり、その時の地味な格好とはうって変わってスリット入りの派手なドレスを着用していた。
「旦那さん、大手企業の課長ですものねえ。羨ましいわ」
「まあねえ。やっぱり夫はバリバリ稼いでくれる有能な男じゃなきゃねえ」
ホホホ、と笑いながら言う奈美子。
そんな彼女を電柱に隠れて見つめる影が1人――
「それじゃあ、楽しんできて下さいね」
「ええ、ありがとう」
会話を終えて、奈美子は1人で歩き始めた。
向かう場所は会員制の高級クラブだ。
(……バリバリ稼げる有能な夫ねえ…………やっぱり、コイツは男を金の成る木としか思っちゃいねえんだ……)
電柱に隠れていた人物――シローは手に持つ大きな石を強く握り締める。
(ムカつくぜ……ああいう女のせいで俺は落ちぶれたんだ…………)
歯軋りをしながら、奈美子を覗き見るシロー。
(ぶっ殺してやる)
周囲に人が居ないことを確認して、シローは電柱から飛び出し奈美子の元へ走り寄る。
