その頃、のばら公園にて
「ほら、今日は沢山取れたぞ!」
そう言ってゴミ袋を逆さまにして、中に入っている空き缶や缶詰を出す老人は今朝、内河が庇った男性だった。
彼が出した缶を見て、ボロボロの衣服を纏(まと)っている老人老婆達が笑みを浮かべた。
「スゴいじゃないかウシオさん!」
「これで少しは楽になるわねえ」
ウシオがゴミ袋から取ってきた缶を手に取った人々が歓喜の声をあげる。
彼らは様々な事情があって、住む家が無い老人達だ。
のばら公園は、遊具も錆び付いていて狭い為か滅多に人が寄り付かない。
その為、彼らのような者達が住み着いているのだ。
「……うるせえな、人が寝てるってのに……静かにしやがれ」
公園の奥で新聞紙を被って寝ていた老人が起き上がり、ワイワイ騒いでいる仲間達を睨みつけた。
生え際が後退しているシワだらけの老人は明らかに不機嫌な表情だ。
「あっ、シローさん。見てください、ウシオさんがたくさん缶を集めたんですよ」
茶色い手拭いを顔に巻いている老婆が指差した物を見るシロー。
「ほう、ウスノロの割には頑張った方じゃないか」
どこか刺のある誉め言葉に、ウシオが肩を落とす。
「何処で手に入れてきた? 言ってみろよウシオ」
「いつもの三丁目です。あの主婦に見つかったけど、変な学生のおかげで逃げられました」
「あの主婦って言うと、前にも言っていた奴か」
ウシオが頷くと、シローは舌打ちをした。
「逃げてきた、ねえ。情けない……お前は昔、警官だったんだろう? あんなクソ女、一発ぶん殴ってやりゃあいいものを」
「そ、そんなこと出来ませんよ」
「かー、情けねえ! そんなんだから舐められるんだ! 一発も食らわせないとかよお、良い子ちゃんにも程があるぜ!」
暴力的な思考を持つシローに仲間達が冷ややかな視線を送るが、彼は全く気にも留めずに元居た場所に戻り、寝直した。
「はあ……またシローさんに怒られちゃったよ……」
「まあまあ、気にするなウシオさん」
落ち込むウシオの肩を、白髪の老人が叩いて励ます。
「シローさん、あの主婦には異常な反応を示すねえ」
「……まあ、妻の面影(おもかげ)があるんだろ」
シローについて語る老人達。
(……ケッ。好きに言ってろ)
狸寝入りをしていたシローは、彼らの言葉を盗み聞きしていた。
