「何だよー、佐々木のヤツ機嫌悪すぎだろ。彼氏にでも振られたか? まあ、こんなアバズレじゃあ嫁の貰い手が無いわなあ」
心の声を口に出してしまうという悪癖(あくへき)を最悪のタイミングで発動してしまった内河。
(あーあー…………)
クラス全員が心の中で溜め息を漏らした。
そして、火の粉が自分に降りかからないように誰もが佐々木から目を反らす。
ビシュン
凄まじい速さで、内河の額にチョークが飛んで行った。
ガツッ
「ぎゃひん!」
机に倒れ伏す内河。
そんな彼に大股で近づく佐々木。
「貴方みたいに不真面目な生徒がいるから、先生の指導が悪いって嫌みを言われるのよっ! 廊下に立ってなさあい!」
どうやら佐々木の機嫌が悪い理由は、指導についての嫌みを言われたかららしい。
ビシッと教室の外を指差すと、内河は額を押さえながら廊下に向かう。
「……あと、先生は既に結婚してますっ! アバズレでも嫁に貰ってくれる人が居るんだからねっ!!」
内河の背中に向かって佐々木は彼の言葉を訂正するのだった。
「ふう……さあ、朝礼を…………」
教室を見渡す佐々木の目に、机に突っ伏して寝ている黒斗の姿が映った。
「ごらああああああっ!!」
ぶちギレた佐々木が黒斗の頭にチョップをくらわせる。
「いってえな……このアバズレ教師……」
「アンタまでアバズレ言うなああ!! 廊下に直行!!」
「へーい」
気の抜けた返事をすると、黒斗はアクビをしながら教室を出ていった。
(……絶対、廊下で居眠りするでクロちゃん…………はあ、今日は先生に逆らわん方が良さそうやな……)
教師の怒りを買わぬよう、いつもより気を張りつめる鈴であった。
