いつもと同じように、時間に余裕を持って登校していた内河。
「ああ、今日は良い天気だなあ。こんな日は橘に告白されそうだなあ! グフフ」
自分に都合の良い妄想をして、自ずとニヤケる内河。
エヘエヘ、と笑いながら歩いていたが突然横から物体が飛んできて、勢いよく衝突した。
「ドッギャーン!!」
悲鳴をあげながら、物体の下敷きになって倒れる内河。
「この薄汚いジジイ! 片付ける方の身にもなりなさいよ!」
程無くして内河に向かって女性の罵声が飛んできた。
「ぎゃひっ!! ゴメンナサイ、ゴメンナサイ! とりあえず謝っておきます!」
下敷きになったまま謝る内河。
正確には内河の上に乗っかっている物体――ではなく人物に向けられたのだが、彼はパニックになっていて気づいていない。
「す、すいません……」
頭上からしわがれ声が聴こえると同時に、全身にあった重みが無くなった。
「ふわ……死ぬかと思った」
ようやく動けるようになった内河は声がした方を見やる。
そこに居るのは髪をお団子で纏めた中年の主婦。
右手にはホウキが握られている。
そんな彼女と向かい合っているのは、初老の男性。
服は薄汚れていて、所々に穴が空いている。
右手には泥がこびりついた透明のゴミ袋が握られていて、中には空き缶や開けられていない缶詰めが少しだけ入っていた。
