「イヤッホー! ギリギリセエーッフ! さっすが俺、幸運の女神に愛されてるぅっ!」
入ってくるなりハイテンションで叫ぶ内河に、生徒達の視線が集まるがソレも僅かな間だけで、直ぐに興味を無くされ注目が外れる。
「あ、あれえ? ここはギリギリセーフすごいね、とか何で遅くなったの、とか声をかけるもんじゃないの? それが青春じゃないの?」
苦笑いしながら内河が言うが、誰も話など聴いていない。
「……世間の風は冷たい」
しゅん、と落ち込む内河。
そんな彼を哀れんだのか、鈴が席を立ち声をかけた。
「おはよー内河くん。内河くんが遅く来るなんて珍しいな、どないしたん?」
「うおお橘! 今日も相変わらず可愛いなあ! そしてさすが未来の妻! 俺が言ってほしいことを言ってくれるなんて!」
───さすがも何も、さっき声に出してたやろ!
反射的にそんなツッコミが口から出そうになるが、何とかその言葉を飲み込む。
「さあ、言うぞ! 俺が遅れた理由を話したら、橘も俺にベタぼれ間違いないぞ! そんなに聞きたいなら教えてあげよう! 実はあ…………」
得意気な顔をしながら内河は今朝の出来事を話し始めた。
