「…………何故、ここに? ……いや、それ以上に……その気配は何だ?」

「……………………」

大神は、やはり何も答えない。



今の大神は、いつもと違う“気”を纏っていた。

人間ではない死神の“気”を。

そして、その“気”は有理に死を唆(そそのか)した死神と同じだった。



「……今まで上手に人間の気を作っていたのか? 大した演技力だな」

「演技などしていない。人間の気も僕自身の持つ物だ」

「何?」



この男は人間の気と謎の気――2つも持ち合わせているというのか。


疑問ばかりが黒斗の脳裏に浮かぶ。

そんな彼の考えを見透かしたように大神は嘲笑(ちょうしょう)を浮かべた。


「フフッ……僕の正体が分からないようだね。まあ仕方ないか、君のような“出来損ない”の死神じゃあねえ」


“出来損ない”という言葉を聞いた黒斗の顔が強張った。


「おや、お怒りのようだな。言い方が悪かったか? “失敗作”と呼んだ方が良かったかい?」

「黙れ!!」

怒りを露に大神を怒鳴りつける黒斗。


「相変わらず血の気が多いね……死神らしくない」


黒斗の殺気など気にもせずに、大神は飄々(ひょうひょう)とした態度を崩さない。