「……………………」

顔や身体に付着した返り血を拭うこともせず、黒斗は伸也の亡骸を見下ろしている。


伸也の身体は血に濡れているというのに、傷口は一切無かった。



「あー、あー、くましゃん、こあいよお」

未だに幻覚を見続けている芽衣は、倒れたまま痙攣(けいれん)を繰り返していた。

口からは泡が出て、焦点(しょうてん)も定まっていない。



(……もう長くないな)

芽衣の死期を悟った黒斗は彼女を放置して黒いゲートを開き、その場を後にしようとする。



グチャッ



「っ!?」


だが、何かが潰れるような音が聴こえて、足を止め振り返る。



「…………お前は…………大神……!」

そこに居たのは、芽衣の頭を握り潰している大神。


黒斗が驚いた様子を見せると、大神は微笑(びしょう)し、芽衣の頭から手を離した。



ドチャリ



グッタリと倒れこむ芽衣の遺体。



黒斗は瞬時にデスサイズを取り出すと、素早い動きで大神に向けた。