ガッシャアアアン
激しい衝撃音が鳴り響き、恵太郎と父親が飛び起きた。
「い、いったい何事だ!?」
先に音の出所に辿り着いたのは父親。
音がした玄関に向かった彼は信じられないものを目の当たりにした。
「……なっ…………何なんだコレは!!」
バラバラに飛び散っている扉の破片、壊れた家具の数々、そして全身血だらけでうつ伏せに倒れている妻と、ベッタリと血がついた壁。
「おい、しっかりしろっ!」
妻を抱き起こして声をかけるが、既に彼女は息絶えており、顔はグチャグチャに潰れていて面影もない。
「…………お前も邪魔だよ」
背後から声が聞こえて振り向くと同時に、顔を鷲掴みにされる。
「死ね」
グギイィ
顔を掴む力が増すと、父親の首は背中方面に血を噴き出しながら曲がった。
謎の人物が手を離すと、父親の巨体はドタリと倒れた。
「……さて、と」
2人を殺した、茶色い髪の青年――大神は階段を見やると、そちらに向かって歩き出した。
グシャリ
途中にあった母親の遺体を躊躇(ちゅうちょ)なく踏みつけながら、大神は階段を目指して進んでいく。
「だっ……誰だお前はっ!?」
階段の上から、松葉杖をついた恵太郎が驚きの声をあげた。
ちなみに、恵太郎からは両親2人の惨殺死体は見えていない。
「……君が、竹長 恵太郎だね?」
ニッコリと笑う大神。
一方、恵太郎は得体の知れない大神に怯えて、逃げようとする。
「逃げることないよ、僕は君に危害を加えるつもりは無いからさ」
だか松葉杖を使っている為に動きが遅く、簡単に追い付かれてしまった。
「僕は教えに来たんだよ。君のお兄さんが、君の友達……月影 黒斗に殺されかけていることを」
兄と黒斗の名を聞いて、恵太郎の顔色が変わる。
「……月影が……兄ちゃんを殺す……? ……バカなこと言うなよっ! 何で、月影が兄ちゃんを殺さなくちゃいけねえんだよ!」
「月影 黒斗こそが“死神”だからさ」
淀(よど)みなく答えられた大神の言葉に、恵太郎は今度こそ言葉を失った。
─月影が死神?
─つまり、俺の右足を切り取ったのは月影?
─そして、今度は兄ちゃんまでも殺そうとしている?
友人が死神であると聞かされて、恵太郎は首を振る。
「いい加減なことを言うなよ! 月影が死神だあ? そんな……そんな訳……!!」
「……見れば分かるよ」
言い終えるや否や、大神は恵太郎の額に人指し指を当てた。
「……っ!?」
激しい頭痛に襲われて、目を瞑(つぶ)る恵太郎。
やがて、彼の脳裏にフラッシュバックのような映像が映った。
