「にゃ、んで!? しんしゃんは、芽衣のこと、しゅきなんちゃなかったにょ!?」
床を這(は)って伸也の足にすがる。
だが、伸也は腰を屈(かが)めて、芽衣の柔らかい髪を乱暴に鷲掴みにした。
「僕が君のことを好きだって? ただ遊んでやってただけなのに、思い上がってんじゃねえよ! バーカッ!」
聞き覚えのある罵倒(ばとう)の仕方に、芽衣は思い当たるふしがあった。
“芽衣がアンタのこと好きだって!? ただ遊んでやってただけなのに、思い上がってんじゃないわよ! バーカッ!”
呆然とする芽衣を見て、伸也は心底愉快そうに笑った。
「覚えてる? 7年前……君が将来を潰した“竹長 伸也”に言い放った言葉だよ……ククッ」
「ろうちて、アンダがじっでるのっ!?」
「まだ気づかないの? 僕の名前は“伸”……ただ伸也から1文字取っただけの源氏名(げんじな)なのにさ」
「あっ……!」
ただでさえ青かった芽衣の顔色が、さらに蒼白(そうはく)になる。
「あの時は屈辱(くつじょく)だったよ……全て……そう、全てが上手くいく所だったのに……君という悪魔が僕の全てを終わらせた……!」
忌々(いまいま)しそうに芽衣を見下ろす伸也は、忘れたくとも忘れられない過去を思い返した。
