芽衣が伸也の言った言葉の意味を理解するのには数分かかった。
─踊らされていたのは芽衣の方?
ボーッとしていて働かない頭を重く感じながらも芽衣は伸也の顔を覗き見るが、そこにいつもの優しい笑みは無く、芽衣を嘲(あざけ)るようなふざけた笑みを浮かべていた。
「……っ、ろーいう、ことよっ! 芽衣が、逆に踊らされてらって…………あ、みゃさか…………」
あまりにも異常な己の状態に、1つの考えが浮かんだ。
「芽衣、に……あの薬……みゃぜたの!?」
「ハハハッ!! そうだよ、やっと気づいた!? 缶ビールを渡した時、既に飲み口が開いてただろ? 君がよそ見をしてる間に山根に使って余った薬を入れておいたんだ!」
そう言われて芽衣の脳裏に、先程までのやり取りが再生される。
“開けておいたから”
─あの時か
─あの缶ビールには、既に麻薬が混入されていたのか
─そして
伸也が早々のセックスを断ったのも、話している間も腕時計を見て時間を気にしていたのも――麻薬の効果が発症するのを待っていたからか。
