「だああああーー!!」
奇声をあげながら、黒斗と鈴の間に割って入ってきた男が1人。
鈴に好意を寄せる内河だ。
「なにっ! やってんだよっ! ナデナデなんか、やっちゃって! イーヤらしーいっ!!」
興奮状態の内河は、顔を真っ赤にしながら黒斗に詰め寄った。
「お前みたいな変態紳士は、金輪際(こんりんざい)橘に触るんじゃなーいっ!! 橘に変な病気が移ったら責任とれるのか!? とれないだろーがー!!」
頭を両手で抱えて上を向きながら、内河は叫ぶ。
そんな彼を周りの生徒達がクスクス笑いながら見つめているが、内河は気づいていない。
「橘の綺麗な髪が、月影の変態菌で汚れてしまったじゃないかっ! 今すぐ洗い落とさないと……むしろ、俺が洗い落としてやりたいっ! ……ん、つまり橘とお風呂……? ブボッ!」
しまいには変態じみた心の声を叫びつつ、いかがわしい妄想をして鼻血を出す始末である。
これが美青年だったら“残念なイケメン”で通っただろうが、内河は顔も残念だから救いようがない。
鼻血を流しながら絶叫し続ける内河を、黒斗は冷めたような目で見つめ、鈴は苦笑いする。
「……本物の変態に変態と呼ばれたくはないな」
「アハハ……」
雰囲気をぶち壊され、すっかり萎(な)えてしまった2人は授業の準備を始める。
「……クロちゃん、気遣ってくれておおきにな」
「…………ああ」
心地よかった黒斗の手の感触を名残惜しく思いながらも、鈴は笑顔で礼を述べるのだった。
