「あーあ……やっちゃったのかあ。まあ別に大丈夫か」
そう呟くと、伸也は足に纏(まと)わりつく光を振り払い、脱衣場に戻って身体を拭き、衣服を纏った。
「だずげっ、が、じんじゃ、っう!」
なお助けを求める光だが、伸也は無視して出口に向かう。
「まっ、べぼ!!」
そんな伸也を、光は動かない下半身を引き摺り、震える両手の爪を床のじゅうたんに引っ掻けながら追いかけた。
聡明(そうめい)そうで、美しかった顔は今やヌルヌルした液体と鼻血、ゴポゴポと零れる泡でぐちゃぐちゃに汚れていて目も当てられない。
全身をビクンビクンと震わせて、ズルズルとにじり寄ってくる光の姿は、まるでゾンビのようだった。
「……ごめんね。君に恨みがある訳じゃないけど……仕方ないんだ」
爽やかに笑う伸也。
いつもと同じ紳士的で優しい笑みなのに、今はその笑顔が冷たく、悪魔のように見えた。
「や、じん、ざっ」
バタン
必死に伸ばした手は届くこと無く、無情な音と共に扉と光の未来は閉ざされた。
