「ただいまー」
疲れた様子で伸也は扉を開き、自宅へと入った。
時刻は丁度、午後に変わったところだ。
ひとまず、渇いた喉を潤そうと伸也がキッチンに向かうと、テーブルに恵太郎がだらけた様子で座っていた。
思わぬ先客に、伸也は目を丸くする。
「おー……お帰り兄ちゃん……」
「お帰り、じゃないよ。学校はどうしたの? あと母さんは?」
「母さんなら友達と隣町まで買い物……それに学校は休んだよ……昨日、肉ばっか食いすぎたせいかな……朝からスッゲー下痢(げり)続いて、今やっと治ったトコ……」
覇気(はき)の無い声で答える恵太郎の顔色は確かに悪い。
おそらくキッチンとトイレを何度も行き来し、出す物を全て出しきったからだろう。
「なあ兄ちゃん……今日は、また何処か出かけんの?」
「うん、4時頃から用事があるんだ」
伸也は答えながら冷蔵庫を開け、中に入っていた天然水を一気に飲み干した。
冷たい水分が全身に染み渡り、何とも言えない快感に包まれる。
一方、恵太郎は不貞腐(ふてくさ)れたように眉を寄せて、伸也を睨んでいる。
「最近、兄ちゃん出かけてばっかりだ……なーんか、怪しい」
「ええ?」
弟の言っている言葉の意味が分からず、苦笑する伸也。
「もしかして兄ちゃん、俺に隠しごとしてね? 怒らないから言ってみろよ」
図星をつかれた伸也の表情が僅かに歪む。
(そうだ……恵太郎は僕に関してはヤケに鋭いんだった)
